建設業の求人で見る「日給月給制」は、月額を定めたうえで、欠勤した日数分を控除する方式です。日額×勤務日数を月に一度支払う日給制とは違います。この区別を誤ると、祝日や現場休止で当然に月収が減ると誤解してしまいます。この記事では、厚生労働省系ハローワークの公式説明を基準に、完全月給制・日給月給制・日給制を分け、休業手当と求人票の確認方法まで整理します。
この記事でわかること:
- 日給月給制・月給制・日給制・時給制の違いと計算単位
- 欠勤・所定休日・会社都合の休業を分けて考える方法
- 求人票で給与形態を見分ける手順と、月給制へ移行が進む背景
結論:日給月給は月額、日給制は日額で決まる
まず4つの給与形態を整理します。混同しやすいので、計算単位で押さえてください。
| 給与形態 |
計算単位 |
欠勤時の扱い |
| 完全月給制 |
月単位で固定 |
欠勤しても原則減額されない |
| 日給月給制 |
月額を定める |
欠勤・遅刻・早退分を規程により控除する |
| 日給制 |
1日単位 |
働いた日数分のみ支払われる |
| 時給制 |
1時間単位 |
働いた時間分のみ支払われる |
厚生労働省系のハローワークQ&Aは、日給月給制を「賃金を月額で決め、欠勤日数分を月額から減額する方式」、日給制を「1日いくらと決め、労働日数で毎月の賃金が変動する方式」と説明しています。違いは支払日が月1回かどうかではなく、賃金の決定単位が月額か日額かです。年収の総論的な考え方は施工管理の年収の記事にまとめてあります。
日給月給制と月給制の違いを詳しく
2つの形態を、もう少し具体的に比べます。呼び方が似ているので、性質の違いを正確に押さえましょう。
- 月給制(完全月給制):月単位で給与額が固定されます。その月の労働日数や、欠勤の有無にかかわらず、原則として決まった額が支払われます。収入が安定するのが最大の特徴です
- 日給月給制:月額を決め、欠勤・遅刻・早退がある場合に、就業規則・賃金規程などで定めた方法で控除します。所定労働日をすべて勤務した月は、祝日数に応じて日額を掛け直す方式ではありません
- 日給制の月払い:日額を決め、勤務日数を掛けて賃金を算出します。支払いを月1回にまとめても、賃金の決定単位は日額のままです
「月給日給制」など統一的でない呼び方もあります。名称から推測せず、労働条件通知書と賃金規程で、基本給の決定単位、欠勤控除の対象、1日分の控除額の計算式を確認するのが確実です。
建設業では呼び方より賃金規程を確認する
建設業の求人では、「日給月給」「月給日給」「月給換算」など似た表記が並びます。法律上の待遇は名称だけで決まらず、実際にどの単位で賃金を定め、何を理由に控除するかで判断します。
- 月額を定め、欠勤だけを控除する:日給月給制
- 日額を定め、勤務日数を掛ける:日給制。月1回払いでも日給制
- 月額を定め、欠勤でも基本給を控除しない:完全月給制
求人票は募集時の概要です。採用時には労働条件通知書で賃金の決定・計算・支払い方法を確認し、欠勤控除の式が必要なら就業規則・賃金規程も見せてもらってください。
欠勤・所定休日・会社都合の休業は別に扱う
日給月給制を読むときは、「働かなかった日」を一括りにしないことが重要です。
| 状況 |
確認する扱い |
| 本人都合の欠勤 |
賃金規程に基づき月額から控除されることがある |
| あらかじめ定めた所定休日 |
月額を日額×出勤日数で計算し直す日給制とは異なり、休日数だけで自動的に減額とはならない |
| 年次有給休暇 |
欠勤とは別。法定の方法で賃金が支払われる |
| 会社都合で所定労働日を休業 |
労働契約・就業規則に加え、労働基準法26条の休業手当を確認する |
会社の都合で所定労働日を休業させる場合、厚生労働省の休業手当Q&Aでは、使用者の責に帰すべき事由なら平均賃金の60%以上の休業手当が必要と説明しています。悪天候が不可抗力に当たるか、会社側が他の作業を用意できたかなどで判断は変わるため、「雨なら無給」と一律には決められません。
落とし穴2:有給休暇と社会保険への影響
日給月給制でもう一つ押さえておきたいのが、有給休暇と社会保険の扱いです。
まず有給休暇について。日給月給制でも、法律の要件を満たせば年次有給休暇は付与されます。有給を取得した日は、欠勤とは違い賃金が支払われます。ここで大切なのは、「日給月給制だから休むと必ず無給」ではなく、有給休暇を使えば賃金を確保しながら休めるということです。ただし、有給の残日数を超えて休めば、その分は控除されます。日給月給制で働くなら、有給休暇の付与日数と取得のしやすさを確認しておくと、収入の安定に役立ちます。
次に社会保険について。日給月給制でも、適用要件を満たせば健康保険・厚生年金などの社会保険に加入します。賃金の決定方式と社会保険の適用は別の話です。求人を選ぶときは給与形態だけでなく、社会保険の加入状況も確認してください。手当や税金・社会保険を含めた手取りの考え方は施工管理の手当の記事も参考になります。
完全月給制との比較は年間条件で行う
完全月給制は欠勤時にも基本月額を減らさない点で安定性があります。ただし、制度名だけで待遇の良し悪しは決まりません。日給月給制でも基本月額や賞与が高い場合があり、完全月給制でも固定残業代の比率が大きい場合があります。
比較する項目は、基本月額、欠勤控除の計算式、年間休日、賞与、固定残業代、会社都合休業の扱いです。月額だけでなく、同じ勤務条件を置いた年間総額と時間当たりで比べてください。未経験から建設業に入る場合の求人の見極め方は未経験から施工管理に転職する記事にまとめています。
日給月給制の年収を見積もる考え方
日給月給制の求人を検討するなら、月ごとの変動を織り込んで年収を見積もる視点が役立ちます。金額そのものは会社や地域で違うので、ここでは考え方の型を示します。
求人票の月額を12倍するだけでは、欠勤控除、賞与、固定残業代、手当の条件が抜けます。ただし、日給月給制を日額×勤務日数と捉えて、祝日の数を機械的に引くのも誤りです。
現実的な手順は、(1)欠勤がなかった場合の基本月額、(2)固定残業代と手当の内訳、(3)賞与の算定基礎、(4)欠勤1日当たりの控除額、(5)会社都合休業時の扱い、を確認することです。そのうえで「欠勤なし」と「想定する欠勤あり」の2通りを計算します。日給制の月払いなら、日額×年間勤務日数で別に計算してください。
同じ「月末払い」でも計算は3通りある
たとえば、3社とも賃金を毎月末に支払うとしても、計算の土台は異なります。
- 完全月給制:基本給を月額で定め、欠勤しても基本給を控除しない
- 日給月給制:基本給を月額で定め、欠勤時は賃金規程の式で控除する
- 日給制の月払い:日額を定め、その月の勤務日数を掛けて支給する
支払日が同じだから、賃金形態も同じとは限りません。「基本給は月額と日額のどちらで決まっていますか」と聞けば、2と3を切り分けやすくなります。
日給月給制の欠勤控除額は、月額をその月の所定労働日数で割る方式、年間の所定労働日数から1か月平均を出す方式などがあり、会社の賃金規程で異なります。ここで独自の式を当てはめてはいけません。面接時の説明と、採用時に交付される労働条件通知書・就業規則・賃金規程が一致するかを確認してください。
また、本人の欠勤と会社による休業も分けます。本人が働ける状態なのに、受注不足や資材不足など会社側の事情で所定労働日を休みにした場合は、単なる欠勤控除として処理できるとは限りません。休業手当の対象か判断に迷う場合は、都道府県労働局や労働基準監督署へ相談できます。
ケーススタディ:松尾さんが「計算単位」を確認した方法
松尾さん(29歳)は建設業への転職で、2社の求人を比べていました。求人票の月給表記はほぼ同じでしたが、A社は日給月給制、B社は完全月給制でした。松尾さんは最初、A社を「日額×勤務日数の制度」と思い込みましたが、採用担当者への確認で月額を定めて欠勤分だけを控除する方式だとわかりました。
そこで松尾さんは、A社に「基本給は月額で決まるのか」「欠勤1日分の控除はどう計算するか」「会社都合で現場が休みになった場合はどう扱うか」を確認しました。A社は月額を定めて欠勤分だけを控除する日給月給制で、祝日の多い月に自動で月額が下がる制度ではありませんでした。一方B社は完全月給制でしたが、固定残業代の比率が高いことが判明しました。松尾さんは制度名だけで決めず、所定内の基本給と年間条件を比較してA社を選びました。決め手は、日給月給制と日給制の月払いを混同せず、控除方法まで確認したことです。
松尾さんの事例で参考になるのは、制度名ではなく計算式を確認したことです。給与形態は労働条件の根幹であり、基本給の決定単位と欠勤控除を聞くのは正当な確認です。入社後の誤解を避けるため、口頭回答だけでなく労働条件通知書でも照合してください。
求人票で給与形態を見分けるチェックリスト
候補の求人票を、次の順で確認してください。
表記が曖昧な求人では、面接や条件確認で次のように聞くと、制度名だけでなく計算方法を確認できます。
- 基本給は月額で決まりますか、それとも日額×勤務日数ですか
- 欠勤1日分は、どの金額を何日で割って控除しますか
- 祝日など会社カレンダー上の所定休日が多い月も、欠勤がなければ基本月額は同じですか
- 悪天候や受注都合で会社が所定労働日を休みにした場合、賃金・休業手当はどうなりますか
- 固定残業代がある場合、基本給と固定時間数、超過分の支払いはどこに記載されていますか
回答はメモするだけでなく、採用時の労働条件通知書と照合してください。通知書と説明が違う場合は、入社前に訂正または書面での回答を求めます。給与の計算式を説明できない求人は、年間収入を比較する材料が不足しています。
給与形態は、施工管理・建設の年収を理解するうえで、手当と並んで見落とせない要素です。現場種別や職種による年収の違いは建築施工管理の年収の記事で、手当が年収にどう積み上がるかは施工管理の手当の記事で解説しています。給与形態の理解と合わせると、求人票を総合的に評価できるようになります。
最後に、日給月給制は「日額×勤務日数を月払いする制度」ではありません。月額を定め、欠勤分を控除する方式です。完全月給制との違いだけでなく、日給制の月払いとの違いまで確認してください。制度名に安心したり警戒したりするのではなく、賃金の決定単位と控除式を労働条件通知書で確認することが、給与形態の落とし穴を避ける第一歩です。
参考にした一次情報:
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